【当たり前を疑う~Unreal~ #3】食糧自給率って本当に低いの?
▼当たり前を疑う~Unreal~
教育に携わる者として、今の当たり前がこれからもそうである保証はありません。
むしろ、変化のスピードが早い昨今では今の当たり前を疑う方法を子どもたちに伝えていくべきではないでしょうか。学習塾コンサルティング、異業界のマーケター、学校の進路指導担当、プロコーチなど、
様々な形で教育に携わる人材を抱えるLacicuならではの特集記事です。このシリーズを通して、今の当たり前を疑うような問いを皆様に投げかけていきます。
「問い」から「未来」が生まれる時代。
その始まりをつくる。
日本の食料自給率は低い!なんとかしないと!!
なんとなくそう思っている人も多いのではないでしょうか?
選挙のたびに食料自給率の改善を公約にあげる候補者もよく見受けられます。
しかし、日本の食料自給率は何%か答えられる人はどれぐらいいるのでしょうか?
そもそも、食料自給率が細かく分けると3種類に分けられることを知っている人はどれぐらいいるでしょう?
今回は、子どもに正しいことを伝えるために、食料自給率の当たり前を疑ってみます。
食料自給率とは
食料自給率には、大きく2つに分けられます。
■品目別自給率
■総合食料自給率
∟カロリーベース
∟生産額ベース
品目別自給率
品目別自給率とは、単純に重量で計算することができるものです。
品目別自給率=国内生産量/国内消費仕向量
例)小麦の品目別自給率(令和2年度)
=小麦の国内生産量(94.9万トン)/小麦の国内消費仕向量(641.2万トン)
=15%
総合食料自給率
総合食料自給率とは、食料全体について単位を揃えることにより、共通の「ものさし」で計算するものです。
総合食料自給率には、熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」があります。
カロリーベース総合食料自給率
カロリーベース総合食料自給率は、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。
カロリーベース総合食料自給率(令和2年度)
=1人1日当たり国産供給熱量(843kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,269kcal)
=37%
生産額ベース総合食料自給率
生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。
生産額ベース総合食料自給率(令和2年度)
=食料の国内生産額(10.4兆円)/食料の国内消費仕向額(15.4兆円)
=67%
現状と課題を正確に認識する
食料自給率といっても、上述の伝え方だけでも全く印象が変わるはずです。
生産額ベースで食料自給率を見てみると、67%確保できているのです。
なぜ測定方法を変えただけでこれだけ値が変わるのでしょうか?
その原因として、日本は肉や魚、油などのカロリーの高い製品の食料自給率が低いということが挙げられます。
一方で野菜やイモ類などの食料自給率は比較的高かったりします。
日本の土地の狭さや一億人を超える人口を鑑みると、世界基準で考えると、食料自給率67%は妥当だという考え方もできるはずです。
どの数字を切り取って考えるのか、どの立場から考えるのかなど、様々な視点で考えることができます。
明確な答えがある問題ではないということです。
明確な答えのない問題を考えることの大切さ
この食料自給率の問題は、色々な意味で学びの深い内容だと思います。
大人が言っている当たり前を疑う(食糧自給率って本当に低いの?)
↓
事実を正確に認識する(食料自給率にはいくつか種類があり、それぞれで割合が違う)
↓
課題とその原因について探求する(なぜ違う割合があるのか、それぞれでどういう課題があるか考える)
↓
解決方法について自ら考えだす
学びを実践する中で非常に重要なフローに沿って書いてみました。
そして、その最初の視点である「当たり前を疑う」という視点を提供できるかどうかが、
これからの教育で重要になるのではないでしょうか。
世の中の「当たり前」に対して問いを投げかけていくことを、
これからもこのブログで続けていきたいと思います。