【当たり前を疑う~Unreal~ #2】個別指導は本当に良いのか?

【当たり前を疑う~Unreal~ #2】個別指導は本当に良いのか?

▼当たり前を疑う~Unreal~

教育に携わる者として、今の当たり前がこれからもそうである保証はありません。
むしろ、変化のスピードが早い昨今では今の当たり前を疑う方法を子どもたちに伝えていくべきではないでしょうか。

学習塾コンサルティング、異業界のマーケター、学校の進路指導担当、プロコーチなど、
様々な形で教育に携わる人材を抱えるLacicuならではの特集記事です。

このシリーズを通して、今の当たり前を疑うような問いを皆様に投げかけていきます。

「問い」から「未来」が生まれる時代。
その始まりをつくる。

今回は、個別指導について考えてみたいと思います。
「当たり前を疑う」がコンセプトのため、意図して批判的にみていることをご了承いただければ幸いです。

 

さて、集団指導は時代遅れ!これからのトレンドは個別指導!という声を聞くことが増えてきました。
学習塾の先生のお話を伺っても、個別指導のニーズが高いという話をよく耳にします。

このような状態は、学習塾業界にとってどういう意味があるのでしょうか?

 

個別指導の状況

(引用:業界動向リサーチ

2019年から個別指導の売上高が伸長していることが見て取れると思います。

コロナの影響で学校が休校になり、きめ細やかなサポートが求められるようになったのは背景の一つとしてあるでしょう。

また、コロナを契機にGIGAスクール構想の前倒しが決まり、国が主導して教育のICT化が推進されました。
集団一斉授業で画一的な知識を伝達する教育ではなく、一人ひとりの個性を重視した教育が求められた結果がGIGAスクール構想を後押しすることになったのではないかと思います。

そのような中で、学習塾を選ぶ基準においても個別指導のニーズが高くなったのではないでしょうか。

大手学習塾の動向でもそれが表れています。
こちらの資料も併せてご覧ください。

 

個別指導のデメリット

個別指導のコンセプトは確かに現代のニーズと合っていると思います。
ただ、ニーズがそうだからといって、本当に個別指導のほうがよいのでしょうか?

学習塾コンサルティングと、マーケターからの視点で個別指導のデメリットについて考えてみました。

 

先生の質が落ちる

集団指導と比べ、個別指導では大量の先生が必要になります。

そして、先生を増やせば増やすほど人件費が増えるため、塾側は利益が減るため安く先生を雇おうとします。
そうすると必然的に学生が増えます。

もちろん学生でも優秀な講師はいますが、
どうしてもその道のプロの講師とはレベルが違ってきてしまいます。

ちなみに、これは少人数学級の是非を論じるときにもでてくる課題です。

 

月謝が高くなる

当たり前ですが、個別指導の場合は先生が見る生徒の数が少ないため、利益が少なくなります。
なので、利益を確保しようとすると授業料を高くするしかありません。

個別指導で料金が安い場合は、人件費が安い(=学生)可能性が高いということです。

あくまでも構造上の話なのでもちろん例外はあります。
その点を補うために教育のICT活用が期待されています。

 

指導の難易度が高くなる

個別指導のよいところは、一人ひとりの苦手に合った指導ができるということです。

しかし、生徒の苦手に立ち返って教えていると学校の勉強の進度に間に合わないというジレンマがあったりします。
これは個別指導を経験したことがある方であれば、感じたことのある方も多いのではないでしょうか。

先生には、勉強量を増やす力と同時に、長期的なマネジメント力が求められると思います。

 

採用における大手企業の優位性

個別指導の形態というのは、圧倒的に大手(資金とブランドがある)企業が有利になります。

個別指導が拡大できるかどうかは、大量の講師を確保できるかどうかにかかっています。
そもそも講師が足りないと生徒数を増やせないためです。

採用費というのは、規模の経済がききやすいものです。

大量に広範囲で広告投下→運用効率が向上
  ↓
認知度・ブランド力の向上
  ↓
アルバイト応募の増加
  ↓
教室の拡大・生徒受入数の増加
  ↓
さらなる広告投下

という感じです。

講師の質は全く考慮に入れていないですが、採用という観点では資金力とブランド力があると圧倒的に有利になります。

 

中小個別の戦い方

あえて否定的に個別指導を捉えてきましたが、いかがでしたか?
繰り返しますが、個別指導を否定する意図はなく、個別指導は生徒や保護者にとってメリットが大きい素晴らしいものだと思っています。

しかし、経営戦略という点で中小塾が個別指導のみを強化するにはリスクが高いのではないでしょうか。
そういった意味で、「当たり前を疑う」という視点で問いを投げかけてみました。

大手ではできない何かをプラスアルファするのか、
個別指導とは違う路線で勝負するのか、
少人数高単価の設計をするのか、

ICTを取り入れると、さらに戦略の幅は広がります。

 

ニーズと価値観が多様化していく中、個別指導のニーズはますます増加するでしょう。

そんな中で、「個別指導は本当に良いのか?」というこの問いに対して、みなさまでも改めて考えていただければ幸甚です。
読んでいただいて感じた違和感が、自塾の戦略を決める最適な指針だと思います。

この記事を書いた人

Lacicu 編集部

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