5Gへ移行すると、教育業界はどう変わっていく?
日本では2020年から開始される「5G」ですが、どうやら教育業界へも新たな教材の導入が予想されるなどの影響がありそうです。この記事では、5Gが始まった世界での教育とはどのようになっていくのか、解説してみたいと思います。
「5G」とは何か?
日本国内では2020年から順次サービスが開始される「5G(ファイブジー)」とは、スマートフォンをはじめ携帯電話で利用される次世代通信規格の5世代目にあたります。日本語では「第5世代移動通信システム」と言います。現在使われている4Gと比較して、通信速度は20倍、同時接続数が10倍、遅延速度は10分の1と、大きく通信環境が成長することが期待されています。すでにアメリカ、韓国、イギリスなど世界19ヵ国では商用利用が開始されているようです。
5G環境下では4Kなどの高い解像度の動画配信がスムーズになったり、同時接続数が10倍になることから、あらゆるモノをインターネットに繋げるIoT(Internet of Things)がこれまで以上に一般に普及し、人々の生活がさらに豊かになる技術革新が期待されています。
5Gを活用した教育ってどんなもの?
5Gのサービスが開始されると、様々なICT教育(パソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育)が可能になります。
例えばARやVRを活用した、五感に訴える教育が可能になると言われています。現在は写真や映像でしか見ることができない世界遺産などを、生徒は教室にいながら実際そこにあるように感じ、学ぶことができるのです。ものの質感や大きさをよりリアルに体感することができるので、教科書に記載されている内容以上に理解を深めることが可能になります。
また5Gを利用した教育は医療や飛行など、学びの段階でリスクを負う可能性のある分野にとっても、非常に有用な教育が可能となります。アメリカのVRソフトを開発している会社によると、実際にVRで研修を受けた医療従事者は研修内容の80%を覚えていましたが、従来の研修を受けた人は20%しか覚えていられなかったというデータもあります。
より実用的に学んだことを定着させられる教育方法を、5Gが始まった社会では実現できるかもしれません。
5Gを利用したICT教育のメリット・デメリット
5Gを利用したICT教育が可能になると、下記のようなメリットがあります。
・効率的な授業が実施できる
・生徒のモチベーションが上がる
・子供の少ない地域への対策が期待できる
これまで教科書の写真や文章などから教師が説明しなければならなかった内容について、実際に動画やAR・VRを見て学びを深めることができます。生徒の記憶や五感により定着する教育が行えるので、効率的かつ、生徒の興味・関心を促進する授業が展開できます。
また昨今の少子化により専門教科の教員配置が難しい地域の学校などに、動画やAR・VRを利用した遠隔授業を実施することが可能となります。教育格差を解消し、多様な考えに触れる機会を作り出すことが期待できます。
他方、5Gを利用したICT教育のデメリットもあります。
・導入費用コストがかかる
・教員のITスキルが問われる
パソコンやタブレット、ARやVRを使うための機器購入の初期コストがかかります。また、そもそもの通信環境を整備する必要性もあるため、導入段階だけですが相当額の経費がかかることになります。
また機器や通信環境の導入がうまくいっても、これらを利用して生徒に教育を行う教員のITスキルがなければ上手に授業を行うことができません。これらの利用に不慣れな教員にとっては、ICT教育を実施する授業では負担だけが大きくなるかもしれません。
5Gと教育業界の未来
文部科学省が公表している「平成28年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】」によれば、教育用コンピュータの導入は年々増加しています。特にタブレット型端末は平成26年の72,678台から平成29年には373,475台と、3年間で5.1倍に増加しています。
しかし実際には日本の教育現場のICT化は世界から遅れをとっています。教育先進国であるフィンランドでは、2016年からプログラミング教育が義務教育で実施されており、国内の学校で教科書は紙ではなくデジタル端末となっています。
日本の教育業界でも5Gによって、教材のデジタル化、また教員のITスキルが高くなくとも使いやすい教材が多く出てくることで、ICT教育が進んでいくかもしれませんね。