入試で問われる「思考力」とは?
入試界隈において「思考力」という言葉を耳にする機会が本当に増えてきたと感じています。
例えば、2021度から遂に共通テストが始まりましたが、従来までのセンター試験と共通テストの違いとして、「思考力を問う問題」(以下「思考力問題」)に変化するというのがよく挙げられます。
思考力とは、その名の通り「思考する力」であることは間違いないのですが、「入試で求められる思考力とはどんなものですか?」と聞かれてはっきり答えられる方は非常に少ないのでは、と思います。
説明が難しいので思考力という言葉であいまいにしているようにも感じられますが、実際に求められている思考力とは一体何なのか。このコラムでは、入試で問われる「思考力」について深堀ってみようと思います。
思考力問題とは
まず思考力問題とはどのような問題のことを指すのでしょうか。
入試においては、大きく問題は
・記号選択や単語解答などの単答問題
・記述問題
の2つに分けられます。
また、後者はさらに
・基礎的な論理関係や用語の説明を求められる問題(説明問題)
・試験会場で論理を組み立てなければいけない問題(論述問題)
の2つに分けられます。
このうち、単答問題や説明問題については単純に知識を有しているかどうかが問題の正誤に関わっています。
一方、論述問題は多くの受験生が苦手とする問題であり、また塾の先生もどう教えるべきかが難しいと感じる問題でしょう。
そして、思考力問題は、この論述問題です。
まさに新たに共通テストに取り入れられるような問題や、難関大学の個別試験で出されるような問題ですね。
では、この思考力問題(=論述問題)を解く際の手順を確認していくことで、入試に求められる思考力が何なのか確認していきましょう。
思考力問題を解く手順から考える
入試で問われる思考力が何なのかを明らかにするには、思考力問題を解く際の手順を確認すれば見えてきます。
思考力問題は、
STEP1:問題文を読み、内容を理解する
STEP2:必要な知識を選び出す
STEP3:選び出した知識を正しい順番でつなぎ合わせる
の3つの手順で解答していくものです。
STEP1:問題文を読み、内容を理解する
まず最初に、出題者が求めていること、すなわち問題の始点と終点を、問題文を読むことで正確に把握します。
問題文に書いてあることをそのまま理解するだけでよいので難しいことではありませんが、非常に重要なフェーズです。
STEP2:必要な知識を選び出す
何が問われているのかが明確になったら、自分の持っている知識の中から解答作りに必要なものは何かを考え、取捨選択していきます。
入試のためにインプットした膨大な知識の中から本当に必要なものだけを選び出す必要があるので、ここが思考力問題で一番難しいフェーズになります。
ちなみに、ここで必要な知識がインプットされていない場合、その時点で問題を解くことができなくなってしまうので、「暗記」というのは単答問題に限らず非常に重要だということがわかりますね。
STEP3:選び出した知識を正しい順番でつなぎ合わせる
STEP2で選び出した知識を使って、問から答えまでが自然につながるように並び替えます。
「自然に」というのは、「論理的に」ということです。
この際、途中で知識が足らずに前後で話がつながらない、もしくは求められているところと違うところに着地してしまうことが多々あります。
その場合はもう一度STEP2に戻って必要な知識を確認する必要があることからも、STEP2が非常に重要かつ難しいとわかります。
入試で求められる「思考力」とは
以上から本コラムでは、入試における「思考力」とは、
「問題文から求められているものを正確に読み取り、膨大な知識の中から必要なものを選び出し、論理的になるように並べる力」
と結論付けたいと思います。
すごく当たり前のことを言っているだけのようになってしまいましたが、上記で確認したように、中でもSTEP2の必要な知識を「取捨選択する力」は、思考力問題を解くにあたって非常に重要な能力ということは強調しておきたい部分です。
加えて、「暗記」と「思考力」が別物のように考えられてしまうことが多い中で、実は思考力問題を解くにあたって知識のインプットが何よりも前提にあるということも押さえておきたいポイントです。
また、よくこのような思考力問題を解くには、0から1を作る発想力やアイデアのようなものが必要だと言われることが多いです。
しかし、個人的にはこの解釈は少し曲解(というよりは誤解)されていて、実際に求められているのは、STEP2において何が必要かに気付く力が必要だ、というのが正しいと思います。
さいごに
今回は入試における思考力について深堀って考えてみましたが、いかがでしたでしょうか。
私が生徒や保護者だとして、
「センター試験と共通テストの違いってなんですか?」
と聞かれた際に、
「思考力が求められる問題が増えます」
と言われたとしても、どこか腑に落ちないだろうなあ、と思います。
そこで、塾の先生として
「思考力というのは、~の力で、その問題を解くには結局~が重要で…」
というように、思考力問題の解き方やそのためにやるべきことを具体的に説明できれば、生徒や保護者の不安もなくなると思いますし、何より塾への信頼度が大きく上がると思います。
あくまでも今回ご紹介したのは私個人の意見ですが、今回の思考力に限らず、あいまいなまま片付けられてしまっているものについては、再考していかなければならないと感じています。
皆さんはどんなことにもやもやを感じますか?