【当たり前を疑う~Unreal~ #6】志望校を決めることは本当に重要か?

【当たり前を疑う~Unreal~ #6】志望校を決めることは本当に重要か?

▼当たり前を疑う~Unreal~

教育に携わる者として、今の当たり前がこれからもそうである保証はありません。
むしろ、変化のスピードが早い昨今では今の当たり前を疑う方法を子どもたちに伝えていくべきではないでしょうか。

学習塾コンサルティング、異業界のマーケター、学校の進路指導担当、プロコーチなど、
様々な形で教育に携わる人材を抱えるLacicuならではの特集記事です。

このシリーズを通して、今の当たり前を疑うような問いを皆様に投げかけていきます。

「問い」から「未来」が生まれる時代。
その始まりをつくる。

「早く志望校を決めよう!」

「目標に向かって努力しよう!」

学習塾ではよく耳にする言葉ですし、このようなことを生徒にお話ししている先生も多いと思います。

しかし、志望校や目標を決めることは本当に重要なことなのでしょうか?
なぜ志望校を決めないといけないのでしょうか?

今回は、そんな当たり前を疑っていこうと思います。

 

なぜ目標を定めたほうがいいのか

目標を定めたほうが良い理由について考えてみました。

  1. 無駄な行動が省かれ、最短距離を走れる
  2. 考えを共有できる
  3. 計画的な行動ができる

その他にも考えられますが、主要な理由は上記ではないでしょうか。

 

ここで考えなければいけないのが、塾が生徒を何のために指導しているか?という点です。

志望校に受からせるために指導しているのであれば、目標を定めたほうがいいでしょう。
無駄なことや余計なことに興味を持たずに、ひたすら受かるために必要な作業をすればよいのです。

また、計画性がある人間を育てたいのであれば、常に目標から逆算して行動を考えていけばよいと思います。
生徒を管理する工数を少なくしたい場合も、目標を設定することで容易になります。

しかし、これ以外の目的で学習塾を運営している場合に、目標を決めることや志望校を決めることは本当に重要なのでしょうか?

 

目的と目標

ここで、似ている言葉である「目的」と「目標」について整理したいと思います。

「目的(目標)に向かって着実に進む」のように、めざすものの意では相通じて用いられる。
◇「目的」は、「目標」に比べ抽象的で長期にわたる目あてであり、内容に重点を置いて使う。「人生の目的を立身出世に置く」
◇「目標」は、目ざす地点・数値・数量などに重点があり、「目標は前方三〇〇〇メートルの丘の上」「今週の売り上げ目標」のようにより具体的である。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

さて、先生方が使っている志望校という言葉は、「目的」なのでしょうか?「目標」なのでしょうか?

志望校を「目的」と捉えている場合は、入試に合格するために勉強を教えることになります。
入試に合格するために勉強を教えることが、あなたの学習塾でやりたいことなのでしょうか?
勉強とは、志望校に受かるための手段なのでしょうか?

志望校を「目標」と捉えている場合は、その先に目的があることになります。
生徒はその先の目的を見据えて勉強をしていますか?
その目的のために、志望校に受かることは本当に必要でしょうか?

何のために志望校を決めなければいけないのか、中高生に理解できるようにちゃんと説明していますか?

 

「目の前のやりたいことをやる」ではダメなのか?

ここで一つたとえ話をしてみたいと思います。

将来苦労しないために、今やりたいことを我慢して勉強する
  ↓
大学で遊ぶのを我慢して、就職活動をする
  ↓
老後に備えて、やりたいことを我慢して貯金する

上記はどれも目的を持ってがんばってますよね。
ただ、この人はいつ報われるのでしょうか。

極端なたとえ話を出しましたが、将来の投資のために今をないがしろにすることは果たして生徒のためになるのかどうか、という問いが生まれます。

現在はインターネットの発展により、いつでも学び直しができる時代です。
徐々にですが、働きながら大学に行く人も増えています。
むしろリカレント教育は国が推し進めているぐらいです。

そんな中、志望校を決めてそこに向かって努力させることが、生徒たちの幸せに繋がるかどうかを、今一度考えるべきだと思います。
先のことは考えず今目の前のやりたいことに全力を出している生徒のほうが幸せだとすると、学習塾が提供しているものは何なのでしょう。

 

「学ぶ」とは何なのか?

「学ぶ」という行為は、生きることに困らないからこそできる娯楽です。

何かを学んでいると、そこに新たな疑問があり、それが無数に膨らんでいく。
「学ぶ」ことの楽しさはそこにあると私は思っています。

そう考えると、志望校をつくること、目標を設定することが学ぶ楽しさを失くしてしまっている気がします。

 

もちろん、今のことしか考えておらず破滅する例も多くあります。
目的や目標を設定すること自体はとても価値があることです。

重要はそのバランスではないかと思います。

「将来」のことばかり考えて「今」をおろそかにすることは必ずしもその人の幸せには繋がりません。
志望校や目標の話だけではなく、生徒の「今」を理解してあげることも学習塾に求められることではないでしょうか。

この記事を書いた人

Lacicu 編集部

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