注目の集まるホーム・エデュケーションとは?
皆さん、「ホームエデュケーション」という言葉を聞いたことがありますか?
アメリカではホームスクーリングとも呼ばれ、教育が多様化する昨今、注目を集めている分野です。昨年末にはNHK『ウワサの保護者会』でも取り上げられました。
「自分の子どもにとってベストな教育って何だろう?」という疑問は、子どもをお持ちの方や子どもに携わる業種の方なら一度は考える大きな問題だと思います。
今回は教育の選択肢が多岐に渡る今だからこそ知っておきたいトピック、ホームエデュケーションについてです。
ホームエデュケーションとは?
家庭を拠点にいろいろな社会の資源を生かして学んでいくこと。学校のように時間割に沿って家で学習するやり方や、子どもの興味・関心を中心に学んでいくやり方などがある。北欧やイギリスなど多くの国で義務教育としても認められている学び方だ。
(NHK『ウワサの保護者会』より引用)
ホームエデュケーションとは、学校ではなく家を中心に学習を進める教育スタイルのことです。
外国では比較的よく見られる教育方法ですが、国内ではつい十数年前まで「学校に行かない」という部分がクローズアップされ、引きこもりや不登校といったネガティブなパブリックイメージがありました。
しかし日本の「右向け右」という画一的な学校教育から脱落してしまう子どもは多く、「行きたくない」と泣く子どもを無理やり学校へ通わせることに何の意味があるのか?全ての子どもの意思は尊重されるべきではないのか?という議論がなされ、また近頃ではコロナ禍の影響もあり、ホームエデュケーションを実践する家庭が増えてきています。
ホームエデュケーションにはどんな種類がある?
家庭での教育方針が様々であるのと同じく、ホームエデュケーションのスタイルもそれぞれです。その内のいくつかをピックアップしてご紹介します。
・ラーニングアットホーム(Leaning at home)/スクールアットホーム(School at home)
学校のカリキュラムを用いて保護者が教師役となる、もしくは通信教材を使用して家で学習を進めるスタイルです。
・アンスクーリング(Unschooling)
カリキュラムは無く、子供自らの興味・関心・疑問に基づいて学習をするスタイルです。ナチュラルスクーリングとも呼ばれます。
・エクレクティックスクーリング(Eclectic schooling)
エクレクティックとは「折衷的な」という意味です。言葉通り、アンスクーリングとスクールアットホームを合わせたもので、アンスクーリングほど子供の自主性任せにはせず、スクールアットホームほどきっちりしたカリキュラムは作らないというスタイルです。
ホームエデュケーションを支援している団体
じわじわと日本にも広まりつつある自宅での学習スタイル。
社会への啓蒙や保護者の方・お子さん同士のオンライン交流など、ホームエデュケーションを支援している団体をご紹介します。
在宅不登校・ホームエデュケーション 家族のための専門支援機関『HOMESHURE』
全国的なホームエデュケーションネットワークで、1993年から活動されています。保護者の方、お子さん同士の多様な交流の機会を設けたり、学習サポートやホームエデュケーションについての情報提供を行っています。
NPO法人 日本ホームスクール支援協会
「世界を彩ろう」をスローガンに、2000年から活動されているNPO法人です。WEBサイトでの情報提供の他ホームスクール実践者への支援、学習支援、進路相談などを行っています。
有志の方々でホームスクールホームエデュケーション総合情報サイトを運営されています。保護者の方同士の交流会も開催されています。
実際の生活は?
ホームエデュケーションについての大まかな概要をお話ししました。
では、実際に自宅学習を実践していらっしゃる方は毎日をどのように過ごしているのでしょうか?
もちろんご家庭ごとに取り組みの内容も教育方針も異なりますが、ほんの一例としてご紹介したいと思います。
ホームエデュケーションの種類としては、上で紹介したエクレクティックスクーリングの形式を採用するご家庭が多い様子です。
学校ではたとえ指示された問題を授業内に解き終わっても、全員が解き終わるかもしくはチャイムが鳴るまでは席を立つことができません。テキパキこなしても時間が余ってしまうから、ダラダラと解く癖がついてしまいがちです。新しいことをどんどん学びたいお子さんにとって、この時間は非常に苦痛に感じられるでしょう。
誰かと足並みを揃える必要がなく、時間の融通が効くという点は自宅学習の優れたポイントの一つです。
頭の働く午前中に学年相当(もしくは子供の学力に合わせた)の勉強をさせ、終わったらその分を子供自身の好きなことに打ち込ませる時間にしたり、興味がある分野を学ぶ時間にしたり、家族が交流する時間に充てたりする、というケースが多いようです。
こうすることにより、学力を確保しつつも子供は好きなこと・得意なことをどんどん突き詰めていけます。子どもにとって非常に理想的なスケジュールではないでしょうか。
さいごに
平成17年に文部科学省は、「不登校児童生徒がIT等を活用した学習活動を行なった場合、条件を満たしていれば出席扱いにした上でその成果を評価に反映すること」という旨を各都道府県の教育委員会に通知しています。
まだまだ知名度の低い制度ですが、近頃はこの制度を利用してホームエデュケーションを行う家庭が増えてきています。
子供の意思を尊重し、その子の個性を伸ばす教育の新たな選択肢として、今後ホームエデュケーションは全国に広まっていくのではないかと期待しています。