【コロナを乗り切る塾経営を考える Part2】5フォース分析

株式会社Lacicuの山田です。

前回のPart1をご覧いただいた方、ありがとうございます!
学習塾業界の外部要因を分析してますので、まだの方はPart1もご覧ください。
コロナの影響が誰も経験したことのない領域になり、ビジネスマンとしての価値が試されていると強く感じています。

答えのない問題に直面し、乗り切るためには、

冷静に現状を分析→推論→実証

という思考を高速で回していく必要があります。
そのための学習塾業界における外部要因について、今回も有名なフレームワークであるファイブフォース分析を使って分析してみました。

コロナショックで業界はどうなるか?
競合はどのように変わるのか?
今後とるべき戦略は?

自塾の方向性、そこに至る戦略を考える一助となれば幸いです。
※内容については山田の考察になりますので、あくまでも一意見としてご覧ください。

 

ファイブフォース分析とは

ファイブフォース分析とは、外部環境分析のうち「事業環境」の分析を行うためのフレームワークです。

これを考案したマイケル・E・ポーター教授は、経営戦略を考えるうえで、「業界の競争状態」=「競争要因」を知ることが重要であると説いています。

その「競争要因」には、以下の5つの競争要因(5フォース)があり、これが業界の収益性を決めることになるのです。

  1. 新規参入者の脅威
  2. 売り手(サプライヤー)の交渉力
  3. 買い手(顧客)の交渉力
  4. 代替品や代替サービスの脅威
  5. 既存企業同士の競争(競争業者)

 

ポーター教授は「業界」=「収益を奪いあう場所」であると説いています。
一般的に競争というと、同じ業界の競合と競いあうことばかりを想像してしまいますが、それ以外にも、新規参入企業、売り手、買い手、代替品、そして競争相手、この5つ=5フォースが、業界の収益を争う相手となるのです。

5つの競争要因は、業界の中長期的な収益性に大きく影響するため、要因を分析していくことで、現在の業界の収益性の構図がわかり、経営戦略策定時には大変役立つと思います。

 

学習塾業界の5つの競争要因

上記は私(山田)が分析してみた一例です。全ては網羅できていませんがご了承ください。
これを元に、具体的な事例を交えて見てみましょう。

 

競争要因1:新規参入の脅威

新規参入について考える際に重要なことが、「大きな参入障壁が築けているか」です。
参入障壁とは、具体的に以下のようなものを指します。

①規模の経済(生産量増大による単位あたりのコストの低減、固定費の分散等)
②ブランド・知名度の浸透
③資金力
④スイッチング・コスト(他の商品に切り換える際の、金銭・手間・心理的なコスト)

<考察>
①:塾の運営にかかるコストがほぼ地代と人件費のみのため、規模の経済を適用しづらい。
②:ある程度大手塾の認知はあるが、それに代わる選択肢も豊富で地域によってばらつきがある。
③:2018年の経済産業省の調査によると、学習塾の法人と個人の割合は約1:2である。
個人経営の割合が多く、他業界に比べると資金力は見劣りする。
④:進学によるタイミング変化、サービスの差別化のしづらさから、スイッチングコストは低い。

以上から、学習塾業界は大きな参入障壁が築けていないと見ることができます。

事実、表であげたようなWEB系の企業が近年続々と教育業界に参入してきています。

 

競争要因2:売り手(サプライヤー)の競争力

学習塾からみたサプライヤーとは、弊社のようなシステム提供会社(ベンダー)、または教材会社がそれにあたると思います。
この売り手が業界で力を持っている場合や、その売り手の業者数が少ない場合、仕入れコストが高くなる場合が多くなります。
すなわち、自社の収益性が悪化する要因になるのです。

①市場集中度
②製品の差別化
③スイッチング・コスト

<考察>
①:圧倒的に市場を占めているサプライヤーはそこまで見当たらない。
②:Edtechブームで様々な製品がでてはいるが、そこまで大きな差別化はできていないと思われる。教材会社においても同様。
③:教材を変更すること、コンテンツを入れ替えることへの抵抗は少ない。(これは私の経験値から)

以上のことから、サプライヤーの交渉力はそこまで高くないと見ることができます。

また、このコロナの状況下でコンテンツの無料提供をしているところが多いため、しばらくはサプライヤーの交渉力は下がることが予想できます。

 

競争要因3:買い手(顧客)の交渉力

学習塾はtoCビジネスのため、サービスの差別化がなされていない場合やスイッチング・コストが低い場合には、買い手である顧客の交渉力が強くなります。
そうなれば、自社サービスは買いたたかれて、利益率は圧迫されることになります。

①サービスの差別化
②スイッチング・コスト
③買い手の情報量

<考察>
①:サービスの差別化がしづらい。
②:サービス満足度が低い場合、転塾に抵抗はない。
③:SNS、塾比較サイトなどで保護者・生徒の情報量は増加。

以上のことから、買い手の交渉力は向上していると見ることができます。

生徒の集客に苦戦している塾が多いのも、サービスの差別化ができていない、買い手に刺さる情報が発信できていないということが考えられます。
採用力に関しても、同様のことがいえると思います。

 

競争要因4:代替品の脅威

代替品とは、例として、ビール→発泡酒、鉛筆+消しゴム→フリクション、ゲーム機→スマホアプリゲームなど、商品そのものの代替や、機能として代替できるものまで幅広いものを指します。
顧客が代替品への切り替えが容易な場合には、スイッチング・コストが低いため、収益性に影響を及ぼします。
学習塾の場合は、オンライン家庭教師がわかりやすいですが、私立高校が大学受験指導に注力することも代替サービスとなりますので、広い意味では私立高校は競合になり得ます。

①代替サービスの費用対効果
②スイッチング・コスト
③他の業界での変化

<考察>
①:オンライン家庭教師は地代がない分、低価格で提供できます。また、教育系のNPO法人など、無償で勉強を教える団体も増えてきています。
②:特に、コロナの状況下でオンライン対応をする塾が増えてくると、今までオンラインに抵抗があった層が新たにスイッチする可能性が増加。
③:働きがいを社外に求める人が増加しており、ボランティアが改めて注目されている。また、5GやAI技術によって代替サービスや代替品が出現する可能性が増加。

以上のことから、代替品の脅威が増していると見ることができます。

 

競争要因5:競合企業

教育業界は参入企業数が多いにも関わらず、サービスに特徴がなければ差別化が困難で、おのずと価格競争に陥ってしまいます。
高校生の市場に関しては、競合として予備校も増えてきます。集団・個別・自立など、指導スタイルでも分類することが可能です。

 

このように、ファイブフォースによって、業界構造を明確にすれば、どのような戦略をとることで自社が優位性を発揮できるのかが見えてきます。
それをもとに、今後の変化を予測し、自塾に有利な業界構造を創出することが課題であるとポーターは伝えています。

 

まとめ

学習塾業界の特徴として、今後は異業界からの新規参入や代替サービスが増えることで、大幅な淘汰の時代がくることが予想されます。

また、Edtech企業や出版社はサプライヤーの交渉力が低いため、ここでも淘汰が進むでしょう。
ただ、そうなると市場集中度が上がるため、価格も上昇する傾向になると思います。学習塾の収益を下げる原因にもなり得るので注意が必要です。

そして、コロナの影響で顧客の心象も悪化してしまいます。ここで収益を上げるためには、サービスの差別化と顧客に向けての情報発信が益々重要になってきます。

全体を通して振り返ると、学習塾業界はスイッチング・コストが非常に低い業界だと感じました。

逆に考えると、
塾をやめることに煩わしさを感じてもらうには?
塾をやめにくくする心理的ハードルを設けるには?
塾に通ってもらわないといけない理由は?

などに焦点を当てて戦略を考えてみるとおもしろいのではないでしょうか。

次回は「自塾の強みをどう戦略に落とし込むのか」について書こうと思います。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

コロナ対策支援中!

 

この記事を書いた人

Lacicu 編集部

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